今日はあの日ですね、
エイプリルフール。
何か今日はいつもより訪問者様が多いので、
たぶん僕が嘘をつくことを期待しているんだと思います。
で、その期待に応えるべく、
とびっきりのホラ話を更新したいのですが……
やっぱりアレですよね。
最初から嘘だって分かってるのに、
だまされる人はいませんよね。
ってことで、
普通の更新をしようと思います。
今日は珍しく午前中に目が覚めたので、
散歩をしてみようかなと思い立ちました。
春の装いに身を包み、
遅めの朝食を腹につめて、
特に目的地も定めずに家から出ます。
足の向くまま気の向くままに、
僕の住む世界を見て廻ります。
狭い世界ですけどね。
僕の家は集合住宅なんですが、
周りには多くの一軒家があり、
その庭には多くの桜の木が植えられています。
きれいだな、と見上げつつ、
歩き続けるます。
そのままでもきれいなのですが、
風に吹かれている様は格別です。
と、枝の間に何か見えました。
じっと目を凝らしてみると、
なんだか幼い男の子のようです。
彼は枝から長いロープを首にかけてぶら下がっているようで、
風にゆらゆらと揺られています。
「何やりゆうが?」
彼に聞いてみました。
「遊びゆうが。楽しいで! お兄ちゃんもやる?」
おじさんと呼ばれなかったことに安堵しつつ、
やってみる、と答えました。
えいっと地面を蹴り、
彼のいる高さまでジャンプします。
「はい、どうぞ」
彼が新しいロープを渡してくれます。
僕はロープで髪の毛を挟まないように気をつけながら、
ロープを首にかけ、枝に結び付けました。
「それで、こうやって宙ぶらりんになるが」
ゆらゆらとゆれながら、
嬉しそうに教えてくれます。
見ているこっちまで嬉しくなるような笑顔です。
僕は「ありがとう」といいながら、
彼の真似をして見ます。
「ね? おもしろいろ」
得意そうに言う彼に向かって、
僕は笑顔で、楽しいね、と答えます。
若干、首の辺りに違和感はあるのですが、
風にゆらゆらと揺られる感覚が新鮮で心地よく感じられます。
三十分ほどそうしていたでしょうか。
さすがに飽きてきました。
それに今日は僕の住んでいる世界を見て廻ることが目的で
散歩に出たのです。
一箇所で留まるわけには行きません。
僕はロープから首を抜きながら、
落ちないように両手でロープをつかみます。
「ありがとう、面白かった」
男の子に笑いかけます。
彼も笑顔で応えます。
ふっと、気合を入れて両手を離し、
両足で地面に着地。
彼に小さく手を振って、
僕はその場をあとにしました。
気ままな散歩の再開です。
空を見上げて鳥と語らったり、
アスファルトの隙間から咲いている花を眺めたりしながら歩いていると、
道路の真ん中に一人の女の子を見つけました。
いや、女の子とは言っても、
同い年くらいなんですけどね。
高校生にしては珍しい
肌の白さが印象的な女の子です。
その子はなんだか不安そうに手に持った紙に目を落としながら、
あたりに視線を泳がせています。
おそらくは、
道に迷ったんでしょう。
僕で力になれることがあればと思い、
どうしました? と訊ねます。
彼女はハッとしたように顔を上げ、
僕の顔を見つめます。
彼女の表情、
若干おびえたようにも見えます。
とりあえず、名乗ってみる。
変化なし。
僕の顔が怖いのか人見知りなのかは分かりませんが、
とりあえず話しかけた意図を分かってもらおうと、
それ、と言って彼女が持っている紙を指差します。
それでもまだ訝しげな表情の彼女に、
案内しましょうか? と、言ってみます。
すると彼女はほっとした表情になり、
僕に手元の紙を見せてくれました。
思ったとおり、
住所が書かれています。
幸いそこは僕の知っている場所だったので、
こっちです、と彼女の手を引いて案内をします。
案内した住所に建っていたのは、
大きな氷のお城でした。
「ここでいいがでね?」
僕がそう言うと、
嬉しそうにうなずく彼女。
このお城のことは昔から知っていたのですが、
中に入ったことはありません。
今まではそれほどでもなかったのですが、
こんなに近くに来てみると、
中がどんなになっているのか気になってきます。
僕のその考えを読み取ったのか、
彼女は透き通った声で言いました。
「お礼をさせてください。あがっていきませんか?」
反射的に喜んで、と答えます。
……社交辞令だったのかもしれないな。
城の中は氷で出来ているとは思えないほど暖かく、
冬の寒さが苦手な僕としては、少し安心しました。
玄関で靴を脱ごうとする僕に、
彼女が少し笑いながら言います。
「ここは、靴は脱がなくて良いんですよ」
僕は照れ隠しに頭をかきながら、
前を行く彼女についていきます。
しばらくすると、彼女は
大きなドアの前で立ち止まりました。
これも氷で出来ています。
「どうぞ」
感心して眺めている僕に、
彼女がドアを開きながら言いました。
失礼します、と中に入ってみると、
人のよさそうな顔をした男性が座ってこちらを見ていました。
彼女のお父さんでしょうか。
「いらっしゃい、よくきてくれたね」
突然の来訪者である僕を歓迎してくれています。
……社交辞令かもしれませんが。
「そんなとこに立ってないで、座ってくださいな」
声のしたほうを見ると、彼女によく似た女性が、
きれいな透明のグラスとケーキを乗せたお皿を、
宙に浮かせて運んできていました。
こちらはお母さんかな。
「ほらほら、ユキは手伝って」
「言われんでも手伝うって!」
そんな母娘の会話を聞きながら、
僕は、彼女の名前はユキって言うのか、
なんてことを考えていました。
「おやおや?
シンヤくん、娘に見蕩れてるな?」
彼女のお父さんが、
冷やかすように言います。
僕は、へっ? と間抜けな声を返し、
ユキさんは顔を赤くしてお父さんを叩いています。
「シンヤくん、今のことは気にしないでくださいね」
何かムキになってます。
いや、まあ、いいんですけどね。
いつまでも立っているのも変なので、
お父さんとテーブルを挟んで向かいにある、
氷でできたイスに座ります。
僕が座ったのを見ると、
顔を赤くしたユキさんも隣に座ります。
「はい、どうぞ」
彼女のお母さんが、
テーブルの上にカップとケーキを並べます。
「遠慮なさらずに食べてくださいね」
僕に向かって笑顔で言います。
……社交辞令かもしれませんけど。
そうは思ったのですが、
どちらも食べてみるととてもおいしく、
結局、お言葉に甘えて遠慮せずにいただきました。
その後しばらく皆で色々な話をしました。
お母さんの料理のこと、お父さんの仕事のこと、
ユキさんの昔のこと。
彼女は内気なところがあって
今まで家に人を招いたことがなかったようで、
お父さんとお母さんはかなり喜んでいました。
(この話をしたお父さんはユキさんに叩かれてました)
さて、楽しい時間と言うのはあっという間に過ぎるもので、
時計を見ると、お邪魔してからかなりの時間が経っています。
「あ、そろそろお暇します」
僕が言うと、
彼女は寂しそうに、そうですか……、と言いました。
「シンヤくん」
少し真剣な表情になったお父さん。
僕も少し緊張しながら座りなおして、
何でしょう、と答えます。
「できればでいいんだが、
……その、娘とまた遊んでもらえないかね?」
ハッとして顔を上げ、
お父さんを見るユキさん。
「娘は昔から内気で、こんな風に
私たち以外と話す娘を見たのは初めてなんだ。
だから……」
「私からもお願いします」
頭を下げるお父さんとお母さん。
「……同情を誘うつもりですか?」
冷ややかな声で、
僕は言います。
「……そうか、すまなかった」
……ん? あれ?
この人、勘違いしてませんか?
「いえ、あの、僕が言いたいのはですね、
そんなの言わなくても別に……って言うか、なんと言うか」
僕、しどろもどろです。
「……じゃあ、友達になってくれるんですか?」
「一つ条件ね」
人差し指を突き出します。
身構える彼女に、僕は笑顔で言いました。
「その敬語はやめてや」
彼女はぱっと明るい表情になり、
「はい! あ、いや、うん!」
嬉しそうに答えてくれました。
家族の皆も嬉しそうですし、僕も嬉しいです。
「じゃあさ、友達増やしに行こうや」
彼女の手を引いて、ドアを開いて、
お邪魔しましたと両親に挨拶。
二人とも笑顔で見送ってくれました。
こんなことがあるなんて、
たまには散歩も良いものですね。
「どこ行く?」
「あ、あたし行ってみたいとこがあるがって!」
内向的で友達が少ないなんて話が信じられないほど、
テンションの上がっている彼女。
僕は苦笑しながら、
再び彼女の手を引いて案内を始めるのでした。

↑ ……なぁにこれぇ?
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